Category: フィルムノワール
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ネタばれにも程がある!クライム・バイオレンス:香港ノワール『密告・者』を新宿武蔵野館で見た映画の感想文。
眠らない街新宿はノワール映画がよく馴染む
眠らない街新宿。レイトショー上映を望んでいたのに、最終上映は18時30分だったので、西口のチケット街にて前売り券をゲットして新宿武蔵野館で『密告・者』を見てきました。今回も『アクシデント意外』に続いて販促特典のクリアファイルを貰えたので、『CUT』や『アニマル・キングダム』などこれから公開の注目映画のフライヤーをゲットして早速有効活用させて頂きました。
サラリーマンは忙しい
18時半開演20時35分終了の回にて鑑賞したのですが、84席ある劇場は半分くらい埋まっていました。女性同士のお客さんや単品女性もいましたが、圧倒的に仕事帰りのサラリーマンの姿が多くみられ、年齢層はアラフォーメインでした。開始ギリギリに訪れるサラリーマンやあと3分位で終わったのに帰ってしまったサラリーマンの方もいて、忙しい仕事をやりくりして来た人、遠方にあるであろう家路に急ぐ方と、サラリーマンの映画への情熱を垣間見て、映画製作者側として今後も真摯に映画作りに挑まなければと感じさせられました。
稲葉浩志と凛々しい関根勤
こんな風に捉えてしまってはいけないのですが、密告者となる主演のニコラス・ツェーがB'zの稲葉さんに見えてしまい、密告者を囲う刑事のニック・チョンが関根勤さんを凛々しくした感じに思えて、おぉ稲葉さんが!あぁ関根さーん!と、変な感情移入をしてしまいました。
しかし、映画の内容は実によく出来ていて非常に楽しめました。ノワール映画の座は香港から譲らないという完成度で、ノワール映画の魅力をたっぷり味わえる作品に仕上がっていました。
これよりネタばれ突入!これから鑑賞という方は⇒映画を10倍楽しむために!クライム・バイオレンス:香港ノワール『密告・者』直前情報まとめ。
ネタばれにも程がある感想文突入です。
まずお伝えしたいのは「総合的に非常によく出来たノワール映画だ!」という部分です。脚本・演出・演技とどれをとっても申し分のない内容で、やっぱりノワール映画はこうでなくっちゃと思わせてくれました。
密告者という日陰者にフューチャーしたこの作品は、彼らの厳しい境遇とそれを分かっていて利用する刑事の立場の距離の取り方の難しさを描き出し、人間が必ずしも持っている情の部分を巧みな脚本で描き出していました。
男の悲哀。これぞノワール
親が残した借金のせいで夜の蝶となってしまった妹を助けるために密告者となったニコラス・ツェー。妻を記憶喪失に追い込み、密告者に様々な苦難を強いてきたニック・チョン。この二人の男が抱える悲哀がラストに向けてどんどんと高まっていき、最後にはニコラス・ツェーの死、ニック・チョンの逮捕という幕切れに、言い知れぬ無情を感じさせられました。
映画にハッピーエンドは必要だと思いますが、ことノワール映画に関してはバットエンドこそ必須だと考えます。この無情感を与えることがノワールの世界は隠微で魅力的な匂いを放っているが、決して踏み込むべき世界ではないという壁を打ち立てているのです。
アウトローに生きる。男なら誰しも憧れる魅惑の世界。しかし、その実態は安らぐことのない極限の中で生死を綱渡りで歩む日々。生きつく先は、本物の悪魔になるか、死か。そんな無情感に溢れる世界。
ノワールの悲哀には、墜落の道しかない。しかし、サラリーマンの悲哀にこそ、生を勝ち取るために戦うロマンがある。眠らない街新宿。ここには濃密なロマンと墜落が入り乱れ、今日もまた人々を飲み込んでいく。
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